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クマーラスワーミーの職人論

モリスの影響を受けてアーツ・アンド・クラフツ運動に参加していたクマーラスワーミーはインド織物の美的価値を重視し、織物業復興のためには宗教的・芸術的理念を持った運動が重要であると考えていました。その結果、経済的自立を重視して織物の美を軽視していたスワデーシー運動からは距離を置くようになるのですが、ではクマーラスワーミーは工芸・職人をどのように考えていたのでしょうか。

シルパカーラー

クマーラスワーミーは、シルパカーラー(あらゆる創造芸術シルパに従事する者の意)はヴィシュヴァカルマ(世界の創造者)の子孫であるという神話を元に、インドの職人は自らの創造性を「神の啓示」として受け取るものとして捉えています。インドの職人は「時代を越えた集合」であり、集合を通して創造するという考え方は、西洋のロマン主義に酷似しています。

職人が生活の一部で、「工芸・生活・宗教などの機能と結びついている」という点が西洋とは異なる(中世的)システムであり、それが植民地支配によって破壊されているというのがクマーラスワーミーの問題意識です。

この考え方は現代の手工芸開発行政にも影響を与えており、手工芸の職人は伝統社会での創造者として扱われています。

人類学者ブラウアーの見解

しかし、人類学者ブラウアーは、本来はヴィシュヴァカルマの子孫に織物職人は含まれないと指摘しています。南インドのギルドには、鍛冶屋・大工・鋳物師・石工・金銀細工師をヴィシュヴァカルマの子孫であるという神話があり、ヴィシュヴァカルマ・カーストと呼ばれますが、そこでは織物職人など上記5職業以外はヴィシュヴァカルマの子孫に入りません。

また、この神話は南インド以外では殆ど観察されない限定的なものなのですが、インド政府の手工芸行政は、染織職員や織工など他の手工芸職人もヴィシュヴァカルマの子孫としての正当性を持つという言説を利用しているというのがブラウアーの主張です。

要するに、クマーラスワーミーの職人論はややロマン主義的・理想主義的に傾倒するあまり、織物職人を過剰に神聖化している向きがある一方で、その理想主義的なストーリーにナショナリズムを組み合わせた職人論は、インド政府を含めて広く共感を与え、大きな影響を与えたという事です。

参考文献
金谷美和(2007)「布がつくる社会関係――インド絞り染め布とムスリム職人の民族誌――」思文閣出版

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