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インド染物の美術史(2):グジャラートの木版捺染

公開日: : 最終更新日:2019/03/17 インド織物の歴史 , ,

前回、エジプトのフォスタートで出土した染織品に17世紀以前に西インドのグジャラートで生産されたものが多く含まれる事を見ました。今回は、グジャラートがどのような地域でどのように染織品生産が行われていたかを見ていきましょう。

インドにおける文様染めの技法には大きく分けて「手描」と「捺染」があり、前者はカラムカリ(カラムはペンの事)、後者はいわゆる木版捺染で、グジャラートは古くから木版捺染の中心地でした。(フォスタート出土の木版捺染の多くもグジャラート産です。)

グジャラート自体は、1573年にムガル帝国の第3代君主アクバル大帝に併合されますが、ムガル帝国ムガール帝国)の西部地方中心都市として繁栄しました。実際、17世紀になる頃にはグジャラートから綿製品が多く輸出されるようになります。特に東南アジア向けに香料貿易(香辛料貿易)の交易品としても使われていました。中でもタイやカンボジア向けの染織品はサウタギリ布と呼ばれ、20世紀中頃まで輸出されていた事が分かっています。

一方で、グジャラートの捺染品は安価な日常用の実用品が多く、質自体はインド南部・東部のものよりも低かったと指摘されており、17~18世紀のヨーロッパ商人の記録には、グジャラートのチンツピンタドコロマンデル海岸のものより低品質であると書かれており、グジャラートでは技術が精巧でないものの安価に生産出来る木版捺染が発達し、一方でコロマンデル海岸やデカン地方で高品質な手描染織品が発達したという傾向が見られます。

とは言え、グジャラートにはパトラと呼ばれる経緯絣(たてよこかすり)の技術が使われた高品質な織物も作られていました。経緯絣は、予め出来上がりの文様を想定して縦糸・緯糸両方を染めてから織っていくもので、染め方に少しでも間違いがあると文様にズレが生じるので、極めて高い技術が必要なものでした。
パトラ
図:パトラ
出典:国立民族学博物館ウェブサイト

グジャラートでは、更にこのパトラを模倣した染織品を木版捺染で作り、インドネシア向けに大量に輸出していました。本物のパトラほど高度な技術が使われていない分、品質に粗はありますが、その大胆で無造作なところが一種の美しさとして評価され、何よりもパトラよりも安価で生産出来たところが評価されました。

しかし、19~20世紀にイギリスの綿製品が流入した事で、直接若しくは間接的に競合する木版捺染品は衰退していきました。しかし、独立後に行政の取組みなどを中心に徐々に復活し、現在はカッチのダマルカ、ブウジ、北グジャラートのディーサなどで木版捺染品が生産されています。

参考文献:畠中光享編(1993)『インド染織美術―畠中光享コレクション』京都書院

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